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“小よく大を制す”堺貞夫 世界王者松井章圭を追い詰めた極真の奥義のその神髄!

2021年7月21日

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この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

小よく大を制す

武道、主に柔道などでいやそうでもない相撲などでも格闘技でも使われることがあるお題目というか、目標というか、命題的に掲げられている言葉ではある。

しかし、個人的には私は、これを体現した選手はほとんどいないのではないかと言う懐疑的な見方を持っていた。

柔よく剛を制すの反語である剛よく柔を断つではないが、基本的にというが大原則として、身長が高く、体重が重い方を、その逆である身長が低く、体重が小さいものが制する事は、不可能に近いと言っていい。

これは自然の摂理に近い。

犬が馬に勝てず、馬がライオンに勝てず、ライオンが象に勝てないのと同じだ。

残念ながら極真カラテは殴り合いである以上は、小さいやつがでかいやつに勝つ事は大変に厳しいと言わざるを得ない。

しかしそんな中、堺貞夫という武の体現者を発見するに至った。

堺貞夫の素晴らしさを称える前に、受けの名手と言う表現をされることが多いが、それは半分が正しく半分間違っていると考える。

それまで私は極真カラテの様々な軽量級の選手を見てきたが、どうしてもというか、基本的には彼らのスタイルは、蹴りを中心として、接近戦を外し、中間距離で、何とか耐え忍びながら壱発を狙い、それが叶わない場合は判定勝ちもしくは体重判定に持ち込むと言うスタイルになりがちなのだ。

それは当然と言えば当然で、体重差があれば真っ向からの打ち合いに持っていけば勝てないから必然的にそうなる。

しかしこれは個人的には小よく大を制すると言うよりは、小よく大をしのぐと言った言葉の方が適切な気がしている。

しかしこの堺貞夫は、全く違う戦い方を見せつける。

正拳突き

前述したように、だから基本的に軽量の選手は現存するありとあらゆる形を使いこなし、相手を翻弄するような戦い方になりがちだ。

しかし堺貞夫は、基本的には驚くべきことだが、技を3つしか使わない。

右の下段回し蹴り、そして上段回し蹴り、正拳突き。

これだけだ。

恐ろしいまでの男らしさだ、しかも、割合がおかしい。

これに近い選手といえば下段が得意な黒沢浩樹は、数見肇を想い浮かべそうだが、彼らのその割合は、大体下段廻し蹴りが7、突きが2、そして上段が1以下といったところだろう。

しかし堺貞夫は、下段回し蹴りが1、上段回し蹴りが1、そして正拳付きが8なのだ。

正拳突きに、命をかけている。

そして下段と同じ位の割合で上段を狙い、そして同じ位の割合でブチ当てている。

そしてその土台になっているものが、世間に知られているという点を中心に円を描く、一切の脛受け、ガードをしない、理にかなった体さばきなのだ。

安易な形で、脛受けやガードに走ってしまうのは、それはある意味では仕方なく、間違ったことでは無いのだが、体格が小さい選手がそれをしてしまうと、場外まで叩き出されてしまったり、体制を悪くしてしまい、判定負けや、自分の攻撃に体重を乗せることができなくなってしまう。

おそらくはわずか身長157センチにして体重60キロと言うその体格で勝ち抜くために、まさに血のにじむような努力をして身に付けた技術なのだろう。

話によるとその稽古は凄まじいものがあり、指導で言われたことは全てこなし、ワークアウトと言う場所でウェイトトレーニングも取り入れ、専業ではなく勤め人であったにもかかわらず時間をやりくりして1日も休まずに毎日稽古し、さらには試合で本部の怪物と呼ばれた七戸の膝蹴りを食って技ありを奪われ、すぐに立ち上がったものの白目をむいてよだれを流しながら続け、意識が戻ったのは控え室で帯を解いた時だったと言う話だ。

あの100人組手達成、ウェイト制および無差別の全日本、そして世界大会と全てで優勝して、極真史上初のグランドスラムを成し遂げた八巻健二をして、堺先輩は試合上に死を覚悟して上がっていたと言わしめる、侍だったと言う。

彼の試合については多く残されていないが、私が知る限りは第15回全日本大会と、1985年に行われたエフTV杯東北空手道選手権大会の優勝、そしてその強さが世間に広く知れ渡ることになった第17回全日本大会だろう。

一本勝ちの山

第15回全日本大会では、接近してくる相手を円を描きながら微妙に間合いを変化させつつ、強烈な正拳突きを腹に集中させて、そして最後は右の鈎突きで相手を完全にノックアウトしてしまった。

伝説とも言われるFTV杯東北大会は、残念ながら映像が残ってはいないが、初戦を判定勝ちでこなして、準々決勝であの強豪として知られる岩崎達也を破った岡本英樹と相対し、つめてきたその攻撃を円の動きでさばき、岡本英樹が出してきた内股からの通常の右の下段回し蹴りに合わせての完璧なる右の上段回し蹴りで衝撃の1本を決める。

凄まじい、そうとしか言いようがない、軽量の選手が体重上の選手に、ここまで完璧な1本勝ちなどそうそう取れるものではない。

そして準決勝もやはり体格上の相手にさばきながらどんどん中に潜り込んでいき、回り込みながらの強烈な中段突きでまたも完璧な1本勝ち。

そして決勝もパワーではるかに上回る相手に互角の勝負を演じて、体重判定で優勝もぎ取った。

そして第17回全日本大会。

1回戦をやはり強烈な正拳突きからの、右の上段回し蹴りを超接近戦でぶち当てての技ありを奪い、さらに上段回し蹴りを繰り出しての、大差の優勢がち。

そして2回戦、何度も繰り返しハイライトに使われるほどの衝撃。

坪野修三選手を相手に、じっくりと経験の流れをくむ低く待ち、構え、狙ってきた大振りの右の下段回し蹴りに合わせて、それで足をスライドさせての右の上段回し蹴りによる、1本勝ち。

相手は完璧な形で崩れ落ちる。

こんなことができる人間など、いるというのは信じられない。

そして本当に上段回し蹴りを中心として戦いを組み立てられるというのが規格を外れている。

そしてなんといっても注目したのが、三回戦。

相手は後の第20回全日本大会で優勝し、さらには第4回世界大会で準優勝に輝いたアンディフグを相手にパンチで追い詰めた、桑島靖寛。

この戦いこそが、堺貞夫の神化、それが問われる試合だと言った。

しかし、ここで恐るべき事態が起こった。

あのパンチを中心とした、あのアンディフグを追い詰めた、そのパンチを持つ、体格を持つ桑島を、相手に。

あの堺貞夫は、ほぼパンチだけで挑み、攻撃を体さばきだけで交わし、逆に懐に入り込み、パンチを効かせてしまったのだ。

ここでもはや、堺貞夫の実力を完璧に証明された。

後の全日本王者と言うことを考えれば、堺貞夫こそ全日本の王者に足る資格を持っていることは反論する余地がない。

そして語り草として次 継がれている、のちの世界王者松井章奎との戦い。

第17回全日本での松井章圭戦での真実

私はこの試合、大変疑問ではあった。

なぜ松井章圭は、詰めようとしないのか?

中間距離で矢継ぎ早に前蹴り、上段回し蹴り、後回し蹴りを払っているが、当然点を中心として俺を描く完璧なる体捌きを身につけている堺貞夫をとらえることができない。

しかし接近してパンチ、膝蹴り、ローキックで、詰めようとは決してしない。

確かに体格差はあるが、当たらない、ダメージの差はなく、そして堺貞夫は上段もいっぱつ当てており、その差は無いに等しい。

現実として再延長までもつれている。

しかし壇上に緊迫感が溢れているのは事実だった。

それがようやく解明できた。

松井章圭は、堺貞夫のそのパンチ力を理解していた。

だからこそ、決して接近戦には持っていかずに、蹴りで牽制して、そしてバランスを崩したその時だけ、胸のパンチで相手を押し込む、その組み手を心がけていた。

事実としてチャンスがあり、回り込み、堺がパンチの嵐を叩き込もうとしたときは、松井はそれを回避しようと中途半端な体勢で中段蹴りなどを返したりして避けている。

そして大山倍達の甲乙つけがたい戦いとなったため、全く新しい角度からの判定と言うことで、審判団総入れ替えの際延長の末、手数の差により敗れることになった。

正直その後付け臭い新しい角度とか、いやその新しい角度を入れなければ体重判定で堺貞夫の勝ちだろうとしか思えず、しかしやはり再延長は多少差が出たのは間違いないかとも考えるので、何とも物議をかもしだす結果になったものだと言う印象を受ける。

いずれにせよ、結果的に後の世界チャンピオンである松井章圭を本当に紙一重のところまで追い詰めた事は間違いない、そして勝負を逃げたのは間違いなく松井の方だ。

まさに鉄拳。

その拳の破壊力たるや、どれほどのものか。

その上段回し蹴りの速度たるや、目に捉えられないほどのものなのだろう。

点を中心として円を描き、それゆえにどこにもとどまることなく流れ続け、相手の攻撃を完璧に無力化し自分にとって有利なポジションを取り続ける、その腰が落ちた理想的な立ち構え。

その後は仕事との両立が難しいとの判断で引退し、久しぶりに戻って稽古したところその力量は著しく落ちており、それを見た師匠である廣重が、体格がまだ大きかったらあれほど力を落とすこともなかったろう。選手生命が長かったかったら極真の歴史を変えていたかもしれない存在だったと語っていると言う。

身長157センチ、体重60キロにして、完璧なる武を体現した男、堺貞夫。

そのまさに鍛えこまれし卓越した妙技が、拳の威力が、これからも伝え広がることを願って止まない。

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