まっしろな夏と、黒いかげ②

2019年11月9日

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 右手に見える外の景色は、真っ白に照らされた山々が徐々にその本来の色である青緑色を取り戻しつつあった。

 僕は今、山の中のキャンプ場のテントの中で妹とババ抜きをしている。

 時刻は夕食どき、多分六時半くらいだと思う。
 おとうさんは休みの日にいつも遠くに連れて行ってくれた。
 冬休みは温泉とおとうさんの実家に。春休みは泊りがけで遊園地に。
 そして夏休みには海水浴と、この、山のキャンプに。
 それは僕が物心ついた時からの、毎年恒例のイベントだった。

 キャンプカーを借りてたくさんの荷物を詰め込んで高速道路に乗ってキャンプ場を目指して、僕と沙那が寝ている間に着いてリアカーを借りて荷物をゴロゴロ転がして運んで、テントを張ってそこで寝泊りする。
 昼間は近くの池にあるアヒルボートっていう両足で漕ぐやつで競争したり、持ってきたフリスビーを投げあったり柔らかいボールとバットで野球したりして、夜にはそれぞれのテントの前に備え付けてある炉辺でバーベキューをした。
 家族だけの時もあるが、親戚の人を呼ぶ時もあったので、そんな時は余計に非日常を味わう感じでドキドキワクワクした。

 今年は家族だけで、今日から二泊する予定だ。
 キャンプ場に着いてから夕方くらいまで妹とバドミントンやフリスビーをして遊んで、そのあとお母さんが、

『夕飯はバーベキューにするから、今からその道具を取ってくるから二人で遊んでおいてね』

 と言って出掛けていった。

 その後僕らは外で遊ぶのに疲れたので、テントの中に入ってトランプを始めた。

 テントはオーソドックスな白い布地の、でも随分使い古されて大分黄色く変色している物で、僕から見て右手の方に三角の形に入り口が開いている。

「うーん……どれにしようかなぁ」

 神経衰弱、大富豪と流れて、今はババ抜きをしている。妹の手の中にある七枚のカードから引くカードを吟味する。

 ……右から二番目だけ妙に出っ張ってて、妖しく揺れている。





「ほらほらぁ、どれにするのぉ?」

 さらに揺らしてにこにこ笑いながら挑発してくる。

 沙那(さな)は昔から、ずっと僕に懐いてきた。
 僕が漫画を読んでいるとよく後ろから顔を突き出して一緒に読んできたし、格闘ゲームとかやってるとやり方もわからないくせに、さなもやるーさなもやるーと言ってコントローラーをでたらめに叩いた。

 正直最初の頃は面倒くさいなあとか、鬱陶しいなあとか思ってたけど、今は僕もたった一人のお兄ちゃんとして構ってあげるのは当然だと思うようになった。
 やっぱり妹は可愛いわけで。

 でも、昔はひたすら無邪気だったのに、最近だんだん腕白になってきてるようだから、少しだけ将来が心配だ。

「――これだ!」

 意を決して、敢えて誘ってくる右から二番目のカードを引く。
 ここまであからさまな物を、敢えて狙い目にするような頭はまだないだろうと、確信しての決断だった。

 が、

「やったぁー!」

 ――やったぁ? ちょっと待って……

 沙那の歓声に、おそるおそる今しがた引いたカードを裏返す。

 ぐぁ……。

 そこに描かれているのは、全身黒ずくめの男が大きな鎌を振りかぶった、死神の姿を現した絵柄のカード――ババだった。
 ブラフじゃなく、本当だったのか……。

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