まっしろな夏と、黒いかげ①

2019年11月17日

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 テントの外では蝉の大合唱が行われていた。


 みーん、みんみんみんみーんと、まるで地鳴りのような調和音を響かせて、薄い皮のテントの中にもダイレクトに入ってきている。

 ぼんやりしていると耳元で鳴かれているように錯覚してしまうようなそれは、ただでさえ青いTシャツをびっしょりと濡らしている汗を、さらに根こそぎ搾り取ろうとするような鬱陶しさがあった。

 つう、と一滴汗が、こめかみを流れ落ちていった。

 使い古されたテントは外の熱気をまったく遮断してくれていない。湿気の高い熱気が辺りにこもっている。
 真っ白な日差しがテントの変色した黄色に塗り変えられて、僕らの間の空間を突き刺している。
 浮かび上がるのは交互に規則正しく積まれた剥き出しの木の骨組みと、無造作に積み上げられたトランプの山。

「はい、おにいちゃんの番だよぉ」

 目の前で、白のキャミソールに白のフレアスカートを履いた女の子が、七枚のトランプを両手で扇形に広げるように持って、こちらに突き出している。
 二箇所で結んだ先から伸びる緩くウェーブした髪の毛と、やや切れ長の無邪気な瞳が可愛らしい。

 妹の沙那(さな)だ。





 今年小学校に入学したばかりで、最初一緒に通学路を歩いたり、わからないだろうことを色々教えた時はハラハラしてたけど、今じゃすっかり自分のグループを作って楽しそうにやっているらしい。
 あんまり友達が多くない僕の方がむしろが頑張らなきゃな、と苦笑した。
 一年しか一緒の学校じゃないけど、それまでは色々と面倒を見てあげたいと思ってる。

 だって、たった一人の兄妹なんだし。

 右手に見える外の景色は、真っ白に照らされた山々が徐々にその本来の色である青緑色を取り戻しつつあった。

 僕は今、山の中のキャンプ場のテントの中で妹とババ抜きをしている。
 時刻は夕食どき、多分六時半くらいだと思う。

 おとうさんは休みの日にいつも遠くに連れて行ってくれた。
 冬休みは温泉とおとうさんの実家に。春休みは泊りがけで遊園地に。
 そして夏休みには海水浴と、この、山のキャンプに。
 それは僕が物心ついた時からの、毎年恒例のイベントだった。

 キャンプカーを借りてたくさんの荷物を詰め込んで高速道路に乗ってキャンプ場を目指して、僕と沙那が寝ている間に着いてリアカーを借りて荷物をゴロゴロ転がして運んで、テントを張ってそこで寝泊りする。
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