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ⅩⅩⅣ/処女検査③

2020年10月8日

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目次
この記事を書いた人
青貴空羽

小説家にして極真空手家。
更に2年間の英国留学不治の病うつ病になった経験、オタク文化を発信する為ブログTwitterYouTubeを始める。

Twitter:@aokikuunovel

本編

「な、ならなんで……なんで世界を変えるだなんて、言ったのよっ!!」

「それでも世界を、変えるからです」

 そこで気づいた。
 エミルダは。

 アレの言葉が、微塵もブレていないことを。
 これだけ糾弾されても、動じていないことを。

「……どうやって、変えるのよ」

「どうやってじゃなくて、変えるんです。ただ、それだけです」

 掴んでいる手を、解いた。
 意味がなかった。

 この子に文句を言っても、なにも変わらない。
 娘が――ベティータが返ってくるわけじゃない。

「――どうするの、これから?」

 アレはただ、いつものような優しげな笑顔を浮かべた。

「任せます。ただ、運命に。そこに神の導きが、あると信じています」





 アレがエミルダと連れ添って法廷に戻ってきたのを確認して、フィマールは木槌を打ち鳴らした。
 それに一斉に、傍聴席の聴衆と両側にいる裁判官が、注目する。

「ではこれより、裁判を再開する。被告アレ・クロア、前に出よ」

「はい」

 アレは毅然とした様子で、前に出た。
 それに一斉に、視線という視線が集中する。
 それはすべて、敵意と軽蔑と多分な恐怖と少しの好奇心が含まれていた。

 ちらり、とフィマールはアレを見た。
 これだけの視線に晒される、処女検査を受けた娘がどういう顔をしているか、興味が湧いたのだ。

「……ん?」

 そこでフィマールは、微かに眉をひそめた。

 アレは、まったく顔色を変えてはいなかった。
 どういうことだ、と疑問に思った。

 まずあの話から、悪魔と契約を交わしていることは間違いないと見ていた。
 ならば処女検査を終え、その結果に恐れおののき血相を変えているだろうと考えていたのだ。

 なぜ平然としていられる?
 それほどに無智だというのか?

「……んむ」

 まあ、いい。
 いずれにせよ、判決は下される。

 フィマールは落ち着き、アレを見据えた。
 そのあと隣に立つエミルダに、視線を注ぐ。

「して、結果は?」

 エミルダはフィマールの言葉に僅かに視線を下げて躊躇うような間を作ったあと、

「違いました」

「どういうことだ?」

 どちらとも取れるその言い回しに眉をひそめるフィマールにエミルダは、

「処女です。彼女は、悪魔と契約してはいません」

 裁判所内は、騒然となる。

「なんだと?」
「いまあの女官は、なんていった?」
「違うと?」
「あの少女は、処女だと?」

 口々に言葉を紡ぎ合っている。
 それにフィマールの隣に立つ裁判官が落ち着かせようと立ち上がり声を挙げているが、事態は収拾しそうになかった。

 それになにより真ん中で木槌を持つフィマールが、一歩も動かなかった。
 ただじっと、エミルダを見つめていた。

「……魔女では、ないと?」

「違います」

「処女、だったのか?」

「確かに」

「ならば……先の話に聞いた魔術の如き力は、どう説明するというのだ?」

 呆然としたフィマールの言葉に、場が静まりみなが耳を傾けた。
 そのなかエミルダは静かに、

「いま言えることは、それは魔術ではないということです。そしてそうであるなら、彼女が契約したというのも悪魔ではないということです」

「だとするなら、なんだというのだ?」

「私の口からは、なんとも――」

「神です」

 割って入ってきた人物は、言うまでもなかった。

「……娘よ、それが神であるという証拠は――」

「ありません」

「……なぜだ?」
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